自閉症の子供を含め、子育て中のお母さんは子供のことを、かわいいと思う反面、もう嫌だと思うことがありますよね。
当然のことだと思います。
私達の子供は、「自閉症スペクトラム障がい」を持っています。
この障がいの特徴の一つに、両親に懐かないということがあります。
また他には、気に入らないことがあると、それがどんな場所であれ、ずっと泣き叫び続けたりすることもあります。
では、私達はこのような状況で、どのように子供達と接してきたのでしょうか?
お子さんに障がいのある無しに関わらず、きっと、皆さんの参考になると思います。
目次
パパは気付いてる?パートナーの悩み
私達は、生活があって、その中の1つとして子育てがあります。
子育てだけしていればいいというお母さんはいませんよね。
炊事、洗濯、買い物に子供の世話、ご主人の世話だけではなく、さらにパートや正社員で働いているお母さんもいます。
でも、それだけたくさんのことをこなしていながら、子育てで少しでも上手くいかなかったりすると、ご主人や他の人から責められる・・・。
そのため、あなたはこんなことを思ったことはありませんか?
「家事や育児を完璧にできればいいけれど、それをこなすことだけで精一杯。これ以上、何をどうやって頑張ればいいの・・・」
お母さんによっては、悩んで思いつめたり、自分を追い込んだりすることで、ストレスで夜も眠れなくなる人もいらっしゃるでしょう。
「パートナー」の本当の意味は?
「私はあなたの「お母さん」でもないし、「家政婦」でもないよ!」
私達が、子育てが大変だったとき、私はよくイラついて主人に言っていました。
そのせいもあってか、主人も少しずつですが、考えが変わってきたのです。
ある日、こんなことを私に言ってくれました。
・・・主人は家事や育児は「手伝う」ものではなく、「する」ものだと考えが変わったようです。
それから主人は、よくお母さんがイラっとする旦那さんNGワード「何かすることない?」を言うのではなく、例えば「洗物するね」と行動してくれるようになりました。
まだまだなところはありますが、考えを少し変えたり、意識することで行動も良い方向に変わってくると実感しました。
子育て中のご主人には、是非ともわかってもらいたいです。
他の子供と比べるよりも・・・
あの子は、これができている。
あの子のときは、こうだった。
自分の子供の発達状況を客観視するためなど、目的があって比べるのは別ですが、そうでなければ、自分の子供と他の子供を比べるのは、やめましょう。
子供達は、自分のペースでしか発達していきません。
例えると、ゆっくり階段を上っていくイメージです。
もし、階段の段差が高ければ、スモールステップにして一歩ずつ歩いていく必要があります。
ゆっくりだけれど、1歩ずつ進んでいけば、必ず前に進んでいます。
また、階段には必ず踊り場があります。
頑張って前に進んでいるけれど、なかなか上に上らない時期も必ずあります。
成長が感じられるときもあれば、なかなか伸び悩んで焦りそうになる時期があります。
でも、子供の発達のスピードに、親が不安がったり、焦ってはいけません。
今できることから、一歩ずつ取り組むしかありません。
「焦らない」「諦めない」「頑張らない」ことが大事です。
自宅で3歳の長男の療育をしていた頃、こんなことがありました。
乗り物の型はめをする練習をしていたのですが、繰り返すことで、ちゃんとできるようになりました。
しかし、数日後。
型はめの練習が、うまくいかなかったのです。
しかも、わざと間違えているの?とこちらが思ってしまうぐらい、長男はヘラヘラと笑っていたのです。
私はついイラっとしていまい、「何でできないの?前はできたでしょう!」と長男に怒鳴ってしまいました。
あなたにも、こんな経験はないでしょうか?
こんな時は決して焦ってはいけませんし、自分が焦っていないかを意識してみてください。
もし、焦っている感情が原因で、なかなか落ち着けないのであれば、きっとあなたは心に余裕がないのかもしれません。
心に余裕を取り戻すためにも、あなたが気分転換をし、リラックスする時間を確保してください。
また、お母さんは、頑張りすぎてしまうことがよくあります。
もともと、日本人は頑張ることがすばらしいことだと、教えられています。
でも、子育てや療育は、ゴールを目指して、長いマラソンを走るようなものです。
もし全速力で走ったら、最初の1キロくらいで息切れしてしまい、ゴールまで持ちません。
早くゴールに行きたいと焦ってしまうと、ペースを乱したり、怪我に繋がってしまいます。
それなら、最初から無理をしないで、ゆっくりでもいいから、自分のペースで確実にゴールを目指すことが大事です。
マイナスの発想を、プラスへと変える
あなたは、こんな経験ありませんか?
言うことを聞いてくれないから、イライラしてしまう。
外出先で大きな声で騒ぐから、一緒に行きたくなくなる。
怒ってもヘラヘラ笑うから、腹が立ってしまう。
どうやっても泣き止んでくれず、途方に暮れてしまう。
私も同じ経験があります。
人間の感情は、時間の経過と共に落ち着くわけでは、ありません。
特にこういったマイナスの感情は、時間の経過が長いほど、さらに大きく膨れ上がっていくものです。
私は、臨床心理士の先生から長男が自閉症だと診断された時、ショックで立ち直れないまま、日常生活を送っていました。
毎日のように長男の行動に振り回されて、心も体も疲弊してしまった結果、些細なことでも怒鳴ってしまうことが多くなり、その度に自己嫌悪に陥っていました。
これがずっと続いていたら、自分にとっても、長男にとっても悪影響になっていたでしょう。
もし、あなたにマイナスの感情が生まれたときには、発想を転換してみることが大事です。
前向きな言葉・考えにシフトする
あなたは、「自分が大変な思いをしているのは、子供に障がいがあるから・・・」と、イライラ等の原因を子供に求めていませんか?
もしそれだと、あなたのマイナスの感情は、落ち着くことはないですし、お子さんの問題行動の原因を「障がいがあるから」という後ろ向きな言葉で片付けてしまうと、お子さんのためにもなりません。
後ろ向きな考えは、前に進むことを遮ってしまいます。
あなたが前に進むためには、子供の問題行動の原因をひたすら内側に求めるのではなく、外側に向けて考える前向きな考えに切り替えることが必要です。
「この子が落ち着きがないのは、何が原因なのだろう?どうすれば、この子をより良い方向へと、伸ばすことができるのだろう?」
この考えだと、あなたは外へ向けて行動し易くなり、原因を他の視点から探すことができるようになります。
ただ、実はこれは意外と難しいです。
なぜなら、自分の中の感情や、考え方等を整理しないといけないからです。
でもこれができるようになれば、きっと次のことができるようになります。
「思考」と「行動」を分ける
あなたは子供の問題行動等でイライラしているとき、子供に対する受け答えの態度や行動がギスギスしていませんか?
ですが、あなたはどんなにイライラしていても、どんなに不機嫌になっても、言動や行動に直結させてはいけません。
それにより、あなたや子供、はたまた家族全体が嫌な雰囲気になってしまいます。
それを回避するために、思考と行動は、分けなければなりません。
そのためには、どういったときに、どのような行動をとるのか、基本的な方針を決める必要があります。
そして、その方針に照らし合わすことで、正しいと思える行動がとれるようになるのです。
ここで取り上げたいのは、ディズニーリゾートの基本理念です。
ディズニーリゾートでは、多くのキャストと呼ばれる従業員が働いていますが、ある一つの行動基準に沿って行動されていることをご存知でしょうか?
実はディズニーリゾートには、「SCSE」という行動規準があります。
ディズニーテーマパークには、「The Four Keys~4つの鍵~」という行動規準があります。
「The Four Keys~4つの鍵~」は、Safety(安全)、Courtesy(礼儀正しさ)、Show(ショー)、Efficiency(効率)で、全キャストにとって、ゲストに最高のおもてなしを提供するための判断や行動のよりどころとなっており、その並びがそのまま優先順位を表しています。
これは、ディズニー社のライセンシーである当社にとっても、東京ディズニーランド、東京ディズニーシーを運営するにあたって最も大切にしている規準です。
【Safety】 安全な場所、やすらぎを感じる空間を作りだすために、ゲストにとっても、キャストにとっても安全を最優先すること。
【Courtesy】 “すべてのゲストがVIP”との理念に基づき、言葉づかいや対応が丁寧なことはもちろん、相手の立場にたった、親しみやすく、心をこめたおもてなしをすること。
【Show】 あらゆるものがテーマショーという観点から考えられ、施設の点検や清掃などを行うほか、キャストも「毎日が初演」の気持ちを忘れず、ショーを演じること。
【Efficiency】 安全、礼儀正しさ、ショーを心がけ、さらにチームワークを発揮することで、効率を高めること。
東京ディズニーランド、東京ディズニーシーで勤務するすべてのキャストは、入社時にディズニーフィロソフィー(哲学)を学ぶとともに、配属先でもトレーニングの一環として「The Four Keys~4つの鍵~」を学びます。
キャストは「The Four Keys~4つの鍵~」を念頭に置き、常に判断や行動のよりどころとしています。
この行動基準の非常に優秀なところは、ゲストからの要望や、あらゆる事態に対して、その判断や行動のよりどころが明確で、その基準がそのまま優先順位となっていることです。
また、これが社内に浸透していて、アルバイト、正社員の区別なく「それはSCSEに照らしてどうなんですか?」という意識が根付いていることです。
この理念がきちんとあったからこそ、東日本大震災の際、交通機関が復旧するまで、キャストよりも多いゲストの安全を確保し、各キャストの行動により、ゲストの不安を和らげることができたのだと思います。
私達も、子供達の行動を図るうえで、ローナ・ウイングの方針に基づいて、夫婦で話し合い、少しずつ改良しながら、基本的な方針を作成しました。
基本方針の一つとして、「子供との約束を必ず守る」ことがあります。
子供達が保育園に通っていた時期は、よく絵本を読んであげていました。
でも、我が家の子供達は、私が忙しいときや疲れていても、お構いなく絵本を持ってきて「読んで」というアピールで、絵本を差し出します。
だいたいは、子供の要求があった時点で読んであげていますが、どうしても無理なときもあります。
そのため、例えば、外で洗濯物を干している最中だったら「おせんたく、おわったらね」と言います。
長男は、意外と聞き入れてくれるのですが、次男は「今」でないと納得できないようで、癇癪をよく起こしていました。
でも、「後で必ず絵本を読む」という約束をしたので、洗濯物を干すのが終わるまで、次男が癇癪を起こしても、泣いても相手にしません。
「かわいそう・・・」とあなたは思いましたか?
しかし、私との約束をしたのにも関わらず、ここで次男の要求を聞いてしまうと、「大きな声を出したり、泣いたりすれば、お母さんは相手にしてくれる」と思ってしまいます。
そして、自分の要求を聞いてもらうために、より癇癪を起こしたり、泣くようになるのです。
ただし、洗濯物を干すのが終わったら、子供達のところに行き、「待っていてくれて、ありがとう。えらいね。」と声をかけたり、抱きしめたりして、子供達を褒めます。
その後で、「絵本を読む」という約束を必ず果たすのです。
それにより、子供達は、約束すれば親は必ず守ってくれると思ってくれますし、信頼関係が強くなります。
今では「あとでね」というと、子供達は癇癪を起こすことは、ほとんどありません。
それは、今まで私達が子供との約束を破ったことがないからです。
「怒る」と「叱る」
思考と行動を切り離すことができたら、次は、方針に照らし合わせることをしましょう。
ただ・・・
「でも、どうしても怒ってしまうんです。」
「子供は何度言っても聞いてくれない・・・」
「怒らないと、こちらの言うことを聞いてくれないのでは?」
と、思うお母さんはたくさんいると思います。
では、1つ質問です。
あなたはお子さんを叱っていますか?それとも、怒っていますか?
この「叱る」と「怒る」ですが、違うものです。
私達は、叱ることはOKだけど、怒ることはNGだと心がけています。
「叱る」というのは、それを伝えるのには自分にもリスクがある。
例えば、子供に分かり易く、諭すように言うためには、自分のそのときの感情をグッと抑えなければなりません。
また、叱ることにより子供から嫌われるかもしれません。
しかし、子供のためにこのリスクを超え、子供の欠点をとがめ、戒めるのです。
一言で表すと、「For you」(あなたのために)ということです。
では、「怒る」と言うのはどうでしょうか?
子供が自分の思い通りにならないために、自分の中の苛立ちを解消しようと、自分の感情を子供達に向けて爆発させてしまうことです。
とかく、私達は子供達を怒りがちです。
一言で表すと、「For me」(私のために)ということです。
ですから、たとえしつけのためといっても、叱ることはあっても、怒ることがあってはいけないのです。
そして、叱るというのは、決して大声で「〇〇しなさい!」「なぜ、〇〇できないの!」とヒステリックに罵ることではありません。
「叱る」とは、ゆっくりとした口調で、根気強く言って聞かせるものだと考えています。
自己肯定感を育まないと・・・
「自己肯定感」をご存知ですか?
自分に自信を持ち、いろんな事に挑戦していく強い心を育てるためには、自己肯定感を高く育てる必要があります。
自己肯定感とは、「自分は生きる価値があって、誰かに必要とされているんだ。」というように、自分の存在意義を肯定できる感情のことです。
良いところも悪いところも含めて、自分は必要とされている。
今の自分でもいいんだという、「前向きな感情」です。
そして、自己肯定感は人格が形成される根っこのようなものです。
私達は、子供達に「おおらかで、感謝の心を持った礼儀正しい大人になって欲しい」と思っています。
そのため、この自己肯定感を大きく伸ばしてあげようと、ちょっとしたことでも褒めたり等、いわゆる「親バカ」をしています。
長男がLEGOブロックでいろんな作品を作っているのを見ていると、「この子は天才かもしれない!」と思い、「すごいね。上手だよ~。さすがだね。」とごく自然に長男を褒める言葉が次々と出てくるのです。
長男は、やはり嬉しいようでニコニコとしてくれます。
この自己肯定感が低く育てられてしまうと、「自分はダメな人間なんだ、自分は誰からも必要とされていないんだ。」という気持ちが常にあるため、うつ病等の心の病気にかかりやすくなってしまいます。
ここで、新版の「七つの習慣」という本の冒頭に書いてある中国の竹の話をとりあげようと思います。
その竹は、種を蒔いても三年間はまったく変化を見せない。
ところが、三年後地上に少し芽を出すと同時にその竹はあっという間に20メートル以上伸びるという。
では、その竹は3年もの間、いったい何をしていたのだろうか?
それは一気に20メートル以上も伸びる自身の身体を支えるために、来る日も来る日も地中深く根を張っていたのである。出典:完訳 7つの習慣 スティーブン・R・コヴィー
いかがですか?
子供達にも、この竹のように大きく育って欲しいですね。
もちろん、全て一歩一歩の積み重ねになりますから、急には変わりません。
でも、その一歩が積み重なることで、やがて大きく変わって行くのだと私達は考えています。
まとめ
お母さんは、子育て以外に家のこと・仕事のことなど、様々なことを抱え、日々の生活を送るだけで精一杯です。
そのため、子供の些細なことでイライラが募り、怒ってしまうこともあります。
しかし、それはお母さんの都合の話です。
これが続いてしまうと、ご家族だけではなく、特にお子さんの「自己肯定感」の成長に良い影響がありません。
そのために「思考」と「行動」を分け、「怒らずに叱る」スキルを身につけることが大事です。
ただ、これをお母さんが一人で抱え込むことは、ありません。
「パートナー」というご主人や、周囲の人々の理解と協力が大事です。
私達の体験や学んだことを1冊のデジタルEブックにしてあります。
もし、子育てでお悩みの方がいらっしゃいましたら、何かしらのヒントが得られるかもしれないので、下からダウンロードしてみてください。
作った料理を僕も食べるからだよ。
もし、僕が重い荷物を持っていたら、お前はもう片方を持つだろう?
運び終った後に、「手伝ってあげたでしょう。」なんて自慢げに言わないだろ。
それと同じで、家事は手伝うんじゃなくて、やるのが当たり前だと思うようになったんだよ。