お子さんの将来に対しての収入の不安は、当然だと思います。
私たちも、子供の将来に関する就労や、公的年金の仕組み、そのほか行政のサポートなどについては、その都度調べています。
今回は、障害のある人にとって大きな収入源となる、「障害基礎年金」について考えてみます。
なお、年金の仕組みはとても複雑かつ、度々改正されています。
ここでは、大まかに「障害年金とはどのようなものなのか?」
生れながらにして知的障がいがあるお子さんのケースを前提に、現状をかいつまんで解説します。(2018年10月時点)
目次
年金ってどういう仕組みなの?
まず最初に年金は、どのような仕組みになっているのでしょうか?
「公的年金」は、よく言われているように、2階建の構造になっております。
1階部分の国民年金(基礎年金)部分と、2階部分の厚生年金に分かれます。
1階部分と2階部分の両方がもらえる人は、会社員や公務員を務め、
一定期間年金を収めることで、「老齢年金」という形で受け取ることになります。
知的障がいなどのように、20歳以前から障がいある場合は、保険料を支払う事がないままに年金を受給することになります。
このように、年金を納めていない場合は、1階部分の基礎年金部分(障害基礎年金)を受給することになります。
上の表で言うと、緑色の部分ですね。
では、実際に受給をする際に、条件等はどのようになっているのでしょうか?
障害年金を受給する要件
生れながらにして障がいがある人の場合、20歳になると障害基礎年金を受給する事ができます。
このように、年金を支払うことなく受給する年金を、「無拠出年金」と言います。
この無拠出年金を受給するには、次の3つの条件があります。
初診日要件
20歳前に初診日がある必要があります。
また、申請時には、医師の診断書などが必要になります。
実はこの診断書は、申請をするうえでとても大きな判断材料になります。
日常生活を営むうえで、どんな困難が出ているかをちゃんと伝えて、しっかりした診断書を書いてもらうことが重要です。
かかりつけのお医者さんであれば、日頃から、日常で困難になている事があれば、しっかりとお伝えしておきましょう。
また、診断書に関して、気をつける点があります。
診断書は、作成日から3ヶ月以内しか効力がありません。
申請時には、スムーズに診断書を書いて頂けるよう、注意しておくと良いでしょう。
また、そのほかにも、こんなお話があります。
障害基礎年金の申請のため、子どもが通っていた療育機関に、障害基礎年金の診断書の作成を依頼しました。
ところが、「うちでは作成できません」と断られてしまったケースです。
てっきり、お願いすれば作成して頂けると思っていたのに、対応できないと断られてしまったお母さんは、
急いで、他の病院の精神科で診断書の作成をお願いしました。
ところが、ここでも、過去に当院にて受診した経緯がないので、初診で診断書は書けないと言われてしまったのです。
結局、様々な検査を行い、今までの経緯の聞き取り等で、相当な時間がかかってしまった・・・。
と言うものです。
知らなかったとはいえ、お母さんは相当ショックだったようです。
他人事では、すまされないですよね。
障がい状態認定
20歳を迎えた日が、障がい認定日になります。
この障害認定日に、障がいの状態が、年金制度で定められた障がい等級の1級もしくは2級に該当する必要があります。
療育手帳と年金の等級の認定基準は、それぞれ別の制度のため違います。
【障害年金1級の認定基準】
知的障害があり、食事や身のまわりのことを行うのに全面的な援助が必要であって、
かつ、会話による意思の疎通が不可能か著しく困難であるため、日常生活が困難で常時援助を必要とするもの。
【障害年金2級の認定基準】
知的障害があり、食事や身のまわりのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため、日常生活にあたって援助が必要なもの。
このような基準での認定のため、療育手帳の等級がB2でも、障害年金をもらってる方は、中にはいらっしゃいます。
また、療育手帳がB1の中度でも、障害年金1級の重度相当を支給されている人もおられます。
あくまで、手帳と年金は別の制度で、それぞれに認定の基準があるのだということを知っておきましょう。
所得制限
受給者本人の所得による制限を受けます。
単身の1人世帯(扶養親族なし)の場合、所得額が360万4千円を超える場合は、年金額の2分の1が支給停止になります。
462万1千円を超える場合は、全額支給停止になります。
でも実際には、この所得制限にかかる場合は、非常に少ないでしょう。
申請しなければもらえない
この3条件を満たすと障害基礎年金の受給ができますが、何もしなくても貰えるわけではありません。
必ず、必要書類を揃え、お住いの市区町村窓口で申請をする必要があります。
必要書類は、マイナンバー又は戸籍謄本や医師の診断書のほか、初診日を確認するための受診状況等証明書や、
病歴・就労状況等申立書といった、家族が記入する書類などもあります。
日本年金機構のHPに、申請の書式が有りますので、一度目を通しておくと良いでしょう。
※知的障害の場合、生まれた日が初診日とされるため、特に初診日の証明書類を提出しなくても申請が可能です。
初診日を証明する代わりに、療育手帳の写しを提出すれば、初診日の証明として扱われます。
そのため、療育手帳の取得が、ここで役立つかもしれません。
いくらくらい貰えるの?
障害基礎年金の支給額は2018年3月末時点で、2級が年間779,300円、1級が1.25倍の974,125円です。
この支給率は、その年の財政状況によって引き上げや引き下げがあり、改定があると受給者あてにお知らせが届くようになっています。
等級の判定について
障害基礎年金の等級の判定は、地域によって判定のばらつきが大きく、昔から問題になっていました。
2016年から、厚生労働省が認定の地域格差是正のため、等級判定のためのガイドラインが作成されました。
このガイドラインの制定の流れに関しては、等級認定を厳しくする狙いがあるのではないかという懸念もあり、今後の認定状況を気にしておく必要があります。
参考までに、リンク先を掲載しますので、興味のある方は、資料の中の論議の概要だけでものぞいてみてはいかがでしょうか。
厚生労働省HP:精神・知的障害に係る障害年金の認定の地域差に関する専門家検討会
まとめ
障害基礎年金(※無拠出年金)は、次の3つの条件を満たす必要があります。
- 初診日要件
- 障がい状態認定
- 所得制限
そして、必要書類を揃え、お住いの市区町村窓口で申請をする必要があります。
ただ、冒頭にも書きましたが、年金の仕組みはとても複雑で、かつ、度々改正されています。
そのため、普段からそういった情報に気をつけたり、経験者から話を聞いたりなど、
お子さんの将来のために、知らなかったということがないよう、気をつけておくと良いでしょう。
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