自閉症の子どもの不適切な行動にどう向き合うか?その原因は?

お漏らしをする

手を掻きむしる

頭を床に打ちつける

我が家の子供達が、昔あった不適切な行動です。

おかげさまで、今ではそういった不適切な行動はめっきり減りました。

ですが、当時はこれらの不適切な行動を減らすために、毎日奮闘していました。

あなたのお子さんは、いかがでしょうか?

 

自閉症の子どもたちが、好ましくない不適切な行動をとるには、様々な理由があります。

特に発語があまりないお子さんの場合、暑い・寒いだけでなく、

体調が悪くても、それをうまくご両親に伝えることができず、

とても不安な状況であることを理解してあげる必要があります。

そのうえで、子どもがなぜ好ましくない行動をとったのかを、探っていかなければなりません。

 

その原因には、おおまかに以下のようなことが考えられます。

環境の要因

もし好ましく無い行動が、特定の部屋で起る場合、落ち着いていられる部屋との違いによって、何が原因か探る必要があります。

例えば・・・

  • 肌感覚が敏感なお子さんの場合:カーペットを踏む感覚が気になるのかもしれません。
  • 聴覚が鋭いお子さんの場合:道路に面したお部屋は苦手かもしれません。
  • 視覚が強いお子さんの場合:お部屋の壁紙の模様が気になって、ノッキングが始まるのかもしれません。

お部屋を替えると、落ち着いて過ごすことができるでしょうか?

その他にも、同じお部屋の中でも、段ボールなどで衝立てをたてて視覚を遮断すると、落ち着いて過ごせるようになる場合などがあります。

医学的/生理的要因

その他、医学的な原因による場合があります。

日常でよくあるのは、風邪をひいて熱がある時などです。

「今日は具合が悪そうね。ご飯もいつもより食べないし。」

というように、様子を見ていれば、何となく分かることもありますが、その他にも、色々なケースがあります。

 

例えば・・・

お腹がいたくて、パニックを起こしてしまう。

耳の疾患による違和感や痛みが原因で、髪の毛を引っ張ったり、頭を打ち付けたり、耳を引っ張ったりする。

虫歯の痛みで、歯を食いしばったり、ほっぺたをつねったりする。

足の痛みで、歩きだすと機嫌が悪くなる。(整形外科的な問題の可能性)

 

このように、外見だけでは判断できない、本人しか、わかないことがあります。

そのため、普段からお子さんの様子を注意してあげる必要があるのです。

課題の変化、目標設定のミス

子供に無理をさせる事は、子どもにとっても親にとってもマイナスの結果をもたらします。

子どもの能力を大幅に超えた強要は、決して良い結果を産みません。

 

目標を設定する場合、必ず達成出来るような、ほどほどに難しい課題に止める様に注意しましょう。

また、課題を設定する際に、やってみたけれど、ちょっと無理そうな場合は、スモールステップに分解してあげます。

その他にも、一旦出来る課題に戻り、その後難しい課題に取り組むなどの方法があります。

 

例えば、型はめの練習。

最初の頃は、上下はお母さんが合わせてあげて、あとは子どもが、型に合わせるだけにしてあげる。

このように、すごく簡単なところからスタートします。

 

また、常に難しいことばかりではなく、出来ることも織り交ぜてあげることがポイントです。

例えば、読み書きの練習が苦手な子の場合、得意なパズルを先にしてから、また読み書きの練習に戻る等です。

 

その他にも、日常生活に関する練習は、実際の生活に即して練習に取り組んでみて下さい。

例えば、食事の準備の練習は、食事の前に一緒に練習します。

服を脱ぐ練習は、実際にお風呂にはいる直前に練習します。

日常生活の中で、毎回ちょっとづつできるようになることを目指して、練習をする方が効果的なのです。

これまで書いた、環境の要因、医学的/生理的要因や課題の変化以外でも、好ましく無い行動は起こりえます。

その際には、家族全員が協力して、一貫した対応をとる必要があります。

自己刺激行動

自己刺激行動とは、反復的・儀式的な行動、姿勢や発声のことです。(常同運動といいます)

  • 体を前後に揺らす
  • 手をヒラヒラさせる
  • オモチャの車のタイヤを回し、その様子をじっと見つめる。
  • 指を噛む
  • ぐるぐる歩き回る・・・等

常同運動によって、特定の刺激があるわけですが、どの感覚刺激が強化されているのかは、よくわからない場合があります。

例えば、手をヒラヒラさせている場合。

手をヒラヒラさせることは運動刺激ですが、手をヒラヒラさせることで起こる、光りのちらつきは視覚刺激です。

そして、この自己刺激行動はとても強化されやすく、減らす事がとても困難である事が特徴です。

 

我が家の長男の場合、幼児期に手の甲をポリポリ掻く行動があり、なかなかやめさせることができず、手の甲が傷だらけになりました。

何とかやめさせるよう、手を掻くたびに、その都度手を握って、止めていました。

時間をかけて取り組んだ結果、最終的には指をヒラヒラさせる行動に、置き換わっていきました。

自傷に比べれば、比較的許容できるため、現在は指をヒラヒラさせている場面を見掛けたときは、そっと注意する程度にしています。

注意を求める行動

子どもは大人の注意を引くために、不適切な行動を起こす場合があります。

例えば、子供がパニックを起こしながらも、親の顔をこっそり伺っている場合などは注意が必要です。

こういった場合は、子供は親がどういった行動に出るのかを観察しているからです。

 

その他にも、医学的な行動が起因となって、不適切な行動を助長する場合があります。

皆さんは、蚊にさされた時、痒みを我慢できずに、刺された箇所を強くバッテンに傷付けた経験はないでしょうか?

 

これと同じように、お母さんの知らないうちに中耳炎にかかってしまい、頭を壁に打ち付ける場合などがあります。

そうすることによって、耳の痛みが和らぐのです。

ところが、それをみたお母さんは、心配のあまり子供を優しく抱き締めて、優しい言葉をかけます。

すると、子供は次のように解釈してしまうのです。

「頭を打ち続ければ、お母さんは、自分を優しく抱き締めて、優しい言葉をかけてくれる。」

 

皮肉なことに、お母さんのお子さんを心配する行動により、

子供は、それが嬉しくて、もっとして欲しいから、ずっと壁に頭を打ち付けるようになっていくのです。

逃避/回避

例えば、課題が始まるとツバを吐く等のように、嫌な場面を回避する為に不適切な行動をすることがあります。

これは、場合によっては、意図的な排泄であったりします。

いやな場面を避ける為に、不適切な行動を行い、嫌な場面を回避できてしまうと、より頻繁に不適切な行動が増えていくのです。

 

また一見、嫌な場面を回避する為にツバ吐きをしていると思って、対処していたところ、

子どもの様子をよく見ていると、親の反応を窺っていて、実際は、親の注意を求める行動だった。

と、このようなこともありますので、お子さんを十分に観察する必要があります。

 

問題となる原因や対処法については、その子によって違います。

ですから、なぜ子供がその行動をとるのか、よく理解してあげる必要があります。

 

しかし、先ほどの頭を打ち付ける行動のように、親の注意を引く行動と医学的な要因が複合している場合があります。

また、嫌な場面を回避する為にツバ吐きをしていると思っていたけれど、実は親の注意を求める行動だった。ということもあります。

 

このように、一見原因が1つに見える行動であっても、実際は2つ以上の要因が複合していたり、

原因そのものを見誤っていたりする場合があります。

そういった事を防ぐために、何が原因でその行動を繰り返させるのかを、しっかり確認する必要があるのです。

 

その原因の特定のために、ABC機能分析という手法を利用する事になります。

次回は、ABC機能分析について解説します。

参考文献:自閉症へのABA入門 シーラ・リッチマン

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