2017年時点では、一般的に自閉症の確定診断は3歳を目安に行われます。
現在も各研究機関において、例えば2歳児の段階で、何らかの検査を受けるにより、確実な診断を判定する研究が進められています。
では、3歳になるまで、自閉症は全く分からないのでしょうか?
実はそんなことは、ありません。
私達も、子供の行動が不思議だなと思ったのは、子供が2歳の頃でした。
その当時を振り返ると、「ああそういえば・・・」と思い当たることが、数多くあったのです。
目次
乳児期の発達の特徴は?
一般的に赤ちゃんは、産まれてから1・2ヶ月の間に、目を合わせることができるようになります。
この頃の赤ちゃんの視力は、0.01~0.02程度の近視のため、見える距離としては20~50cm程度までです。
この見える距離ですが、お母さんが赤ちゃんを抱っこしたとき距離が、ちょうど当てはまります。
そのため、この頃の赤ちゃんは視線も合いにくく、自閉症かどうかを判定することは、まず難しいです。
私達の子供が自閉症だと分かった2010年に調べた時もそうでしたが、2014年の科学研究費補助事業での研究成果においても、同様の結論が出ています。
従来の初期発達研究において、ASDの行動学的特徴は、乳児期前期には必ずしも認められず、乳児期後期より特徴的行動が明らかになるとされてきた。本研究の結果からも、乳児期前期からの特異的な発達行動学的特長は認め難く、従来の研究結果を支持した。
[出典]科学研究費助成事業 基盤研究C
自閉症スペクトラム障害の超早期スクリーニング
生後10ヶ月頃になると、徐々に視力も0.2~0.25程度になってきます。
すると、人の表情や動きをしっかり認識して、両親のまねをしたり、後追いをするようになります。
赤ちゃんは、本能的に自分を守ってくれるママの側を離れようとしないため、この頃から、後追いが始まるのです。
また、意味は分かっていなくても、いないいないバアなどの手遊びをするようになります。
しかし、自閉症児の場合は、ママの後追いをしなかったり、なかなか手遊び等の模倣をしてくれません。
我が家の長男も、後追いや手遊び等の模倣をしてくれませんでした。
ただ、私は「おとなしい子だな~」としか思わず、特に気にしていませんでした。
そのため、今、当時のことを振り返ると、そういえば、そうだったなと思います。
また、この他にも「特別な理由もないのに、一度泣き始めると、なかなか泣き止まなかった」などの特徴があります。
1歳ころの発達の特徴は?
個人差はありますが、生後8ヶ月の頃からハイハイが始まり、そして、生後10ヶ月の頃からつかまり立ちやつたい歩きが始まり、1歳頃から自立歩行ができるのが一般的です。
自閉症や知的な障がいがある場合は、これらが遅くなったり、またはなかなかハイハイをしなかったのに、いきなりつたい歩きを始めたりした例もあります。
我が家の長男ですが、ハイハイは全くありませんでした。
ハイハイはしませんでしたが、生後8か月頃は「ほふく前進」をし、生後10ヶ月後には、つかまり立ちやつたい歩きを始めていました。
ただ、自立歩行ができたのは、1歳半頃でした。
つたい歩きができてからは、ひたすらそれで移動し、つたい歩きができない所だと、ほふく前進に切り替えていました。
そのため、自立歩行ができるように、家の中や公園でよく練習をしていました。
また、感情面では多くの子供達は1歳頃になると、笑ったり怒ったりなど、様々な表情を見せるようになります。
しかし、自閉症児の場合は、表情が乏しかったり、視線が合わない等の特徴が顕著に現れます。
長男は、呼びかけても振り向かない等があり、耳が聞こえていないのではないかと疑ったりしました。
また、目線を合わせてくれないので、カメラで写真を撮る際には、なかなかカメラの方を向いてもらえず、何度も撮り直しをしました。
療育を始めてから少しずつ改善し、小学校入学の頃になると、カメラの撮影はこちらを向くようにはなりましたが、目線は合わせたり、合わせてくれなかったりなど、まちまちでした。
この他、近くに母親がいても、おもちゃにばかり熱中して、人に対して関心が薄く、模倣などもあまり見られませんでした。
そして、自分で動けるようになってくると、一見意味のないような同じ行動を繰り返す「常同行動」をします。
例えば、意味もなくピョンピョンと飛び跳ねたり、つま先立ちで歩いたり、体を前後にゆすったりなどです。
長男の場合ですが、常同行動としては、つま先立ちで歩くことや、体を前後にゆすったりする「ノッキング」をします。
また自閉症児の場合、言葉による要求ができないため、自分から遠く離れた物を指をさして、相手に伝えると言うことが苦手です。
そのため、何か物を取ってほしいときには、母親の腕を掴んで自分が欲しい物のそばに、母親を連れて行こうとします。
これをクレーン現象といいます。
長男もこのクレーン現象は、よくありました。
当時、長男はおもちゃの「おえかきせんせい」にハマっていました。
私が何か描いた絵を見たら、次に私の手を取り、絵を消す「消去レバー」に私の手を持っていくのでした。
長男にとっては、それが「次、何か書いて」の意思表示だったのです。
このクレーン現象を「意思表示の成長」だと、勘違いしていましたが、自閉症と診断が出てからは、適切な対応をしないと「言葉による意思表示」ができないのだと知りました。
そのため、「書いて」や「もう1回」を長男が言えるように、練習しました。
ここで注意しないといけないことは、このクレーン現象は「何かして欲しい」と言う気持ちの表れですから、単純に手を掴まないように叱ってははいけません。
この「腕を掴む」というきっかけを利用して、欲求を伝える練習につなげていきます。
言葉の遅れについて
健常児の場合、1歳6ヶ月頃には、大人が理解できる単語をいくつか話し出すようになったり、絵本等で「うさぎさんはどれかな?」と言うと指差し等で応えてくれます。
しかし、自閉症児の場合、意味のない言葉を話すことが多く、また人が話す言葉の理解についても不十分である可能性があります。
長男は、この頃は「あ~」「う~」「うぃ~」など意味のない言葉をよく話していました。
しかも、それは私に話しかけるとかではなく、単に独り言のようでした。
私が話す言葉についての理解でしたが、大まかなことは理解しているようでした。
しかし、私が離れたところからティッシュペーパーを指して、「あれ取って」と言っても、理解していなかったり、全く違うことをしたりしていました。
言葉に遅れがある場合、主に考えられる障がいは、次の4つが該当していると言われています。
①難聴
②自閉症を伴わない知的障害
③表出性言語発達障害
④自閉症
ここでは、自閉症に関してのみ記載しますが、自閉症の場合、何もせず自然に言葉が出るまでそのままにしても、言葉は出ません。
自閉症と診断されて、数年後に突然言葉が出ることがありますが、ごく稀なケースです。
このケースに該当する子供は、言語理解が比較的よかったり、後に高機能自閉症(現在は自閉症スペクトラム)と診断されることが多いです。
また、1歳6ヶ月の段階でいくつか単語の表出がみられたのに、2歳頃になると発達が少し後戻りをするように、その単語が消えてしまう「折れ線方の自閉症」といわれる障がいもあります。
我が家の長男は、1歳6ヶ月を過ぎても言葉がなかったので、最初は難聴を疑いました。
でも、長男の後ろから、手をたたいたり、物音をたてると、長男は必ず振り返ったので、難聴ではないと思いました。
そして、次第に増える問題行動やほとんど出ない言語などの要因により、自閉症と診断されたのだと思います。
発語がなければあきらめるしかないのか?
自閉症の場合は、100%有効とまではいえませんが、早期に療育を開始することで言葉の理解が進み、発語を獲得する子供達がいます。
また、仮に発語に至らないまでも、何らかの方法でコミュニケーションの方法を獲得することが可能です。
我が家の長男ですが、言葉に関しては要求語「ください」の練習から始めました。
最初から「ください」を言うのは難しかったので、まずは動作(手話)から取り入れました。
練習方法としては、お茶のペットボトルの絵カードを作り、このカードを持って両手を重ねて叩く動作をしてもらいました。
そして、この動作をしたら、お茶が入ったペットボトルを渡すようにしました。
ただ、この動作練習ですが、まだ模倣ができなかった時期なので、主人に協力してもらい、主人が長男の両手を持って、「ください」の動作ができるように繰り返しました。
そうするうちに自分でカードを取り、「ください」の動作ができるようになったのです。
そして、次の段階として動作をなくし、カードを持って「ください」と言葉を出させる練習に変えました。
これも、長男が確実に言えるように「く」「だ」「さ」「い」とゆっくり長男に伝えるようにしました。
これにより、「ください」が言えるようになり、そして次の段階としては、絵カードをなくすように、物の名前を言えるようにしました。
そして、ようやく「お茶、ください」と言えるようになったのです。
小学校入学以降には、「お茶、ください」以外にも「手伝ってください」の言葉もでるようになりました。
また、ごく稀にですが、本人が楽しかったり、嫌だったりするときに言葉がでたときもありました。
きっと、長男は言葉をずっと溜めて、ものすごく楽しい時など感情が溢れたとき、それによって言葉が溢れて出てている気がします。
当時、長男が好きだった飛行機に乗ったときも、飛行機が離陸した瞬間「すご~い!」と言葉が出ました。
3歳ころの発達の特徴は?
自閉症にはいくつかの診断基準がありますが、5歳未満では殆ど確定は難しいです。
私達の子どもの場合、診断確定は3歳頃でしたが、言葉の遅れを伴わない自閉症の場合、幼少期には手がかりすらつかめないことがあります。
そのため、幼稚園や保育園の集団生活の中でうまくいかなかったり、パニックを起こすなどの問題から診断されるケースもありますが、小学校入学以降に生活上の困難を抱えて判明することが多いです。
自閉症の子供を注意深く観察すれば、以下のような特徴的な行動がしばしば見られます。
- 意味のある言葉を話さない
- 発語がない
- 協調運動がうまくできない
- 人に興味を示さない
- 常同行動がある
- 物を並べる
- 指差しをしない
- クレーン現象
- 感覚過敏がある
- 表情の変化が少ない
- 笑顔が少ない
- 視線が合わない
- クルクル回るものに興味を示す
- ヘッドライトの光等に興味を示す
- スイッチのオンオフにこだわる
- 扉の開け閉めにこだわる
- 嬉しいとピョンピョン飛び跳ねる
「協調運動がうまくできない」というのは、歩き方や走り方がぎこちなかったり、ボールをうまく扱うことができないことが該当します。
私達の子供達も、ボールを投げる動作や縄跳びなど、いろいろな動作を1つにまとめて行うことが、とても苦手です。
感覚過敏とは、体に触れられるのを極端に嫌ったり、服や靴下の感覚が苦手なため、履くことを強く拒否します。
例えば、服についているタグが体にこすれる感触や、服の縫い目が肌にこすれる感触が苦手だったりします。
その他には、音や光に敏感だったり、粘土の感触が苦手だったり、偏食がひどかったりします。
しかし、これらの症状で「何個以上があれば、自閉症と診断」というような基準は特にありません。
これらのことは判断材料の1つであり、自閉症の診断については、受診された医療機関のお医者さん個別の判断にゆだねられています。
大事なことは診断名ではなく・・・
今、仮にお子さんに自閉症の診断が出ても、そこで終わりではありません。
むしろ、ここからがスタートなのです。
そのため、お子さんが抱えた何らかの問題を明確にして、それを改善するためにどのように取り組んでいくのかが、大事なのです。
また、診断が出ることにより、将来にわたってどのようなことに困難を抱えるか、大まかにでも想像ができるようになります。
そして、この困難を早期の療育によって対応できるように、訓練や対応策を練っていくことができるのです。
では、診断が出なかった場合では、どうでしょうか?
1歳6ヶ月健診等で、しばしば、「今は様子を見ましょう」と言われることがあります。
長男の時も、同じように母子推進委員の方から言われました。
でも、それから長男は言葉を発することはなく、むしろ不可解な行動が多くなりました。
そして、長男が2歳頃の頃、別の健診にて今度は、「あなたの接し方が悪い」と言われました。
それから焦りと不安のまま過ごし、長男が3歳になる頃に「自閉症」と診断されたのです。
今思うと、長男が1歳6ヶ月頃から3歳までの間、焦りと不安を抱えていたのに、何もしていなかったことを後悔しています。
もし、あなたのお子さんに前述の特徴があり、発達が気になるようであれば、少しでも早期療育に取り掛かるべきです。
ただ、焦る必要はありません。
最初は、毎日1時間一緒に遊んであげる時間を確保する。
この程度でいいと思います。
でも、「何もしない」は、「何も変わらない」ということを忘れないでください。
徐々に、遊ぶ内容や環境を工夫していけばいいのです。
できないことをスモールステップに分解して、少しずつできる事を増やしていきます。
例えば、健常児であれば、簡単にできる洋服のボタンはめがあったとします。
最終的に、同じように洋服のボタンがはめれる事を目的にしますが、最初は大きなボタンを1~2個だけはめる練習から始めます。
集中できないのであれば、静かな環境を作ってあげます。
周りのおもちゃが気になるのであれば、おもちゃが回りにない台所のテーブル等で練習します。
このように、集中できる環境を整えて、スモールステップで練習する遊びが「療育」と言われています。
まとめ
①乳児期の自閉症の発見は非常に困難で、幼児期の自閉症の発見は発語の遅れであることが多い
乳児期での自閉症の発見は非常に困難で、後から振り返ってみると「そういえば・・・」というケースが殆どです。
幼児期に発語の遅れから、自閉症が疑われるケースがあるが、難聴等のほかの障害の可能性も考えられるため、気になる症状があったら、早めに医療機関に相談しましょう。
②幼児期の自閉症には特有の行動がある
発語の遅れ以外にも自閉症特有の行動があります。
- 視線が合わない
- クレーン現象
- 常同行動がある
- 指差しをしない
- 物を並べる
- クルクル回るものに興味を示す
など。
これらの症状があった場合は、自閉症であることを疑う手がかりになります。
医療機関に相談する際には、具体的にいつ頃から、どういった時に、どういった行動をとるのか、医療機関で質問された際には的確に返答できるようにすることが望ましいです。
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