自閉症の人たちは、どのように世界が見えているのでしょうか?
私達は子供が自閉症だと分かってから、まず子供の見ている世界を理解しようと努力するところから始まりました。
なぜなら、自閉症児は、健常な私達と同じ風景を見ても、その感じ方や注意が向く方向が、全く違うからです。
私達は普段の生活の中で、物音や気温、視覚の情報など、大量の情報が五感を通して入ってきます。
しかし、必要に応じて関係ない情報を、無意識の内に切り捨てる能力を持っています。
例えば、雑踏の中で人と話をしていた場合、目の前の人が話していれば、自然と話に集中して、周りの雑踏を遮断することができます。
しかし、自閉症児の場合、入ってくる情報を取捨選択することが難しく、全ての情報が同時に入ってくるため処理が追いつかず、混乱してしまうのです。
私達も、四六時中、人混みや街中にいたら疲れますよね?
自閉症児にとって、そういった状況は日常茶飯事なので、静かな環境が必要になるのです。
目次
自閉症の子供達には、どのように見えているのか
自閉症児の衝動的な行動
自閉症児は、普段から周囲が見えていないような行動をとります。
自分の興味のあるものが目に入って来ると、例えそれが道路の反対側であたとしても、かまわず飛び出してしまうのです。
我が家の次男は、犬などの動物が大好きです。
次男が、犬や猫、はたまたカラスを見ると、突然それに向かって走り出します。
そのため、ある時は平気で道路を飛び出したり、ある時は側に歩いていた人に気づかず、ぶつかりそうになったこともありました。
こういった行動は、私達の子供に限らず、自閉症児にはおおむね当てはまります。
突然走り出してしまうため、数秒と目が離すことができません。
場合によっては、手を振りほどいて走り出してしまうのです。
ですから、次男が小さい頃は、特に行動に注意していました。
少しでも目を話すときは手を握るなど、一緒に出掛ける時は常に細心の注意を払うようにしたのです。
自閉症児の視野
自閉症児は、物事を注視する際に一定の特徴があります。
この視線に関する研究は、各国でも研究が進んでいます。
自閉症児の視線の特徴として、「集中すると周りが見えない」ことが挙げられます。
気になる箇所は、はっきりと見える反面、周りがぼんやりとしてしまいます。
ちょうどペットボトルを半分に切って、大きい切り口から覗いたようなイメージに例えられます。
例えば、次の2枚の写真を見てください。
健常児の場合ですと、上の写真のような、全体を見る広い視野となります。
しかし、自閉症児の場合ですと、下の写真のように、興味のあるおもちゃだけ見る狭い視野になるのです。
このように、自分が注意を向けているもの以外への見え方が非常に弱いのが特徴です。
私達で例えるなら、ちょうど歩きスマホの感覚に近いのではないでしょうか?
自閉症についての理解を深める
親の苦労
自閉症児を持つ親の悩みの一つに、「一緒に外出することがとても大変」という悩みがあります。
例えば、近所のスーパーに行くと、子供は勝手にどこかに行ってしまう、ところかまわず寝転がってしまう、大きな声で泣き叫ぶ・・・。
そして、スーパーから出て家に帰っても、その行動は続いてしまう・・・。
あなたのお子さんにも該当することはありませんか?
子供がパニックになったり、大きな声をあげてしまうと、両親はお子さんの対応に追われ、買い物どころではありません。
周囲にもなかなか理解されないことがあるので、自閉症児を持つ親は、外出するたびに大変な思いをすることがあるでしょう。
私達も同じように、知らない人から「躾の悪い子供だな・・・」と言われたり、嫌な顔をされたりすることがあります。
以前、長男とスーパーに行ったときに、こんなことがありました。
買い物中に少し目を離した隙、はぐれてしまい、すぐに探したところ、豆腐売り場で長男が立っているのが見えました。
何をしているのかな?と思い、近づいてみてみると、長男はまるで店員さんのように、黙々と豆腐を並べていたのです。
どうやら、バラバラに置いてある豆腐が気にいらなかったようです。
買う予定のない商品に、むやみに手を出すのは良くないため、「やめてください」と長男に注意したところ、「うー!」と長男は大きな声をあげてパニック状態になりました。
私はヤレヤレと、ため息をついていると、近くに立っていたお婆さんが、好奇な目でじーっとこちらを見ていたのです。
どうやら私と長男のやり取りをずっと見ていたようですが、いたたまれなくなって足早に長男を引っ張ってその場を去りました。
他にも、長男の言動に「何あれ?」と嘲笑されたり、私達に対して険しい表情をして睨みつける人もいました。
このように、お子さんの状態にもよりますが、パニックになった子供達を連れて、自閉症の理解がない社会で生活をしていくことは、親としても困難を極めます。
また、お子さんが意味のある言葉を話せない場合、ただひたすらに奇声をあげることになりますから、親ですら何が気に入らないのかも分からない状況になります。
そのため、親も極限のストレス状態におかれることになるのです。
では、なぜ自閉症児はパニック状態になるのでしょうか?
それを理解すれば、お子さんの状況がわかるかもしれません。
子供の視点に立って理解を深める
子供が特異な行動をしたり、パニックに陥ったりする原因を探る前に、私達は子供達の世界観を理解する必要があると思います。
ローナウイング博士が創立したイギリスの慈善団体であるThe National Autistic Societyが公開している動画がとても分かりやすいです。
この動画は、自閉症についての理解を広げるために作成された動画です。
私達もこの動画を見て、子供たちはこんな風に見ているのかなぁと思いました。
僕はしつけの悪い子ではありません。自閉症です。
僕のような自閉症の人にとって、世界はとても怖い場所になることがあります。
時々、耳に入ってくる音は、頭が爆発するように感じます。
時々、服のこすれる感じが、肌が燃えているように感じます。
小さなことが変わると、僕は世界が終わったかのように感じます。時々、僕はあまりにも多くの情報を処理できず、混乱してしまいます。
もし、あなたが僕をしつけの悪い子だと思うなら、あなたの自閉症への理解は十分とはいえません。
いかがでしたか?
登場した男の子ですが、目から入る情報が多いため、視線をあちこちに向けたり、健常の人では特に気にもしない音や光に反応したり、めまぐるしかったと思います。
そのため、男の子は意識的に自分を落ち着かせようと、指で数を数えていました。
でも、最終的には外部からの刺激が多すぎたため、パニックに陥ってしまったのです。
また、自分が辛くても、すぐ側にいるお母さんには助けを求められないなど、自閉症児の特性が表現されていたと思います。
では、今度は子供の視点で体験すると、どうでしょうか?
この動画の一部を、子供の視点でバーチャルに体験できるのが、下の動画です。
この動画は、PCで再生すると、360度操作できますので、体験してみてください。
この360度のバーチャルリアリティ動画は、一部の人は酔いを経験することがあります。
いかがでしたか?
人の歩く音、買い物袋がこすれる音、照明の光、風船の色、水の音・・・多くの刺激があったと思います。
私達が普段気にも留めないようなことでも、大きな刺激として受け止めているのが分かります。
その多くの刺激があるために、お母さんが一生懸命男の子に話しかけていても、子供にとってはとても分かりにくいのです。
そして、男の子がパニック状態になった時、お母さんが落ち着かせるようになだめても、同様です。
また、皆さんは気づかれましたか?
男の子の視線を手元の移動させると、恐竜のぬいぐるみを持っていることがわかります。
男の子は、終始それを触っていますが、やはり、気持ちを落ち着かせるためにしているのです。
自閉症の子供の多くは、色々な音や光が入り混じる場所、人混みやデパート、テーマパーク等などがとても苦手です。
我が家の子供たちも、苦手な場所があります。
二人とも共通なのが、音に対するものです。
私達は旅行に行く際は、なるべくテーマパークは行かず、静かな場所を選ぶようにしています。
もちろん、子供が成長するに伴って、興味の幅が広がり、テーマパーク等にも行きたいと言うようになります。
実際に行ってみると、そこで流れる音楽が怖かったり、音量が大きくて不快だと感じたときは、自主的に耳を塞いでいます。
また、次男は嗅覚が敏感なため、スーパーの魚屋さんのコーナーを通る時には、自分で鼻をつまんでいます。
このように事前に分かっていることについては、耳栓を購入して対応したり、そもそも苦手そうなエリアを外したり、足早に過ぎたりして対応しています。
社会の理解を広めるために
私達がこのようにブログを書いているのは、自閉症児の子育てで悩んでいるお母さんの役に立ちたい、少しでも社会の理解を進めるために、自分達なりに社会へ情報を発信して、自閉症児やその家族に対する理解を深めてもらいという強い想いがあるためです。
私達は、日本は、アメリカに比べ、発達障がいの理解に関して後進国だと感じています。
子供の療育についてまだあれこれ模索している当時、アメリカに在住の日本人の方が書いたこんな記事を見つけました。
この記事を書いたのは、サンフランシスコ在住の日本人女性で、娘:香穂さんと一緒に買い物行った時、息子:渡さんが欲しがっていた帽子が見つかった時の話です。
いろいろ見てると、店員さんが
「なにか御探しですか?」というので、
「フラッパー帽。」
というとすぐにたくさんの帽子を出して来てくれました。
いろいろ帽子の歴史などを興奮気味の娘と話しながら、私の帽子が決まり、
さらに渡がほしがっていたNewsboy Hat(ニューズボーイ帽子)が見つかった。これは大恐慌時代、少年や子供達がニューズボーイハットをかぶって新聞を売っていたものです。
香穂は興奮して、
となりました。けど、香穂がこれだけ興奮してるのだから、帽子を探し続けていて、気に入ったのは見つかっていない渡は、ここに来るとさらに興奮する事は明らか。店長さんに質問です。渡をつれて来よう!と聞くと、店長さん、ちょっと不思議そうな顔をしたので、すぐに娘がすみません。空いてる時間は何時頃ですか?というと急に顔が華やかな笑顔になって、弟が自閉症なんですけど、欲しい帽子があって…。感動….。車いすの人がじゃ、刺激が駄目でしょう?
他のお客さんがいたら、彼は、ゆっくり見れないわよね。
午前はだいたい空いているけど、うちのお店は10時にあくの。朝9時45分に来てくれたら、私は必ずお店にいるわ。
なので、横の窓をノックして頂戴。お店を開けるから。
それだと家族みんなでゆっくり見れるわ。それか、この名刺の番号に都合のいい時間を電話して頂戴。
彼のためにお店を開けるから。もし、他に人がいても気にならないんだったら、やっぱりねぇ、午前が空いているわ。
2月中旬には、お店はしめちゃうから、ちょっと最近は午後は、すごい人なんだけど。
本当に彼が都合のいい時間いつでも来てね!!まっているわ!「2階に行きたいんですが。」と店員さんに言った時に、店員さんが階段を指し示す人がおらず、多くの人はエレベーターの場所を教えてくれます。
「自閉症なんですが」
と言ったら、いつお店の人が
「音とか刺激や人ごみが駄目ね。」
という社会がくるんだろう?100年後か?
と思っていましたが、そういう事が本当に起こった。
私が感動していると、娘が「なんで詳しいの?」と質問。店長さんは、
自閉症の方は、お客さんにもいるし、多いじゃない?と彼女にとっては、どうも普通の事で私達が驚いてる事のほうに驚いている。
出典:ブログ 自閉症 渡の宝箱
このやりとりは、サンフランシスコにあるBlack Cat Hats and Bagsさんでの出来事のようです。
店員さんにとっては、当たり前に知っていることだったんですね。
今の日本で、病院や療育機関以外に、こんな対応をしてくれるのでしょうか?
少なくとも、私達にはその経験がありません。
「子供が自閉症なので・・・」と言うだけで、敬遠されたり、疎まれたりはあります。
いつか日本の社会でも、このような時代が来ることを、切実に願います。
追伸
これまでの私達の軌跡をつづったデジタルEブックを無料で配布しています。
よろしければ、参考にしてみてください。