自閉症児が将来に向けて移動手段を身につけるための3つの心得

先日、長男が通っている特別支援学校にて、OB保護者による座談会がありました。

このOBとは特別支援学校に在籍していた学生のことで、現在は学校(高等部)を卒業されています。

この座談会では、「余暇活動の過ごし方」がメインのテーマでしたが、座談会が進行するうちに、色々と大事なことに気付かされました。

子供が将来自分で移動できる手段を身につけさせる

私達の記事の読者の方は、お子さんの年齢がまだまだ小さい方が多いと思います。

どこに行くにも、お父さん、お母さんが送り迎えをしているのではないですか?

では、その送迎は、いつまでしてあげるのでしょうか?

座談会では「余暇活動の過ごし方」として、水泳・OBによるバドミントン部・ソフト部・陸上・ダンス等、多くありました。

たとえ、障がいを持っていたとしても、様々な余暇活動に参加する機会があり、余暇時間を充実させることができます。

でも、どの保護者の方も大変だと言っていたのは、どのような余暇活動をさせてあげれば?ということではなく、余暇活動の場所までの「送迎」です。

私達が住んでいるところは、都市部よりも公共交通機関が充実していません。

そのため、障がいを持つほとんど方は、保護者が運転する自家用車で送迎してもらうのが一般的です。

では、保護者はその送迎はいつまで、可能なのでしょうか?

当然、私達、親が歳をとれば、運転に支障が出てきます。

もしかしたら、運転ができなくなるかもしれません。

そうなった場合、今まで両親に移動する手段を頼ってきたお子さんは、余暇活動の場所までの移動が困難となり、外出範囲も狭まってしまいます。

そうなる前に、お子さんには、何らかの方法で将来的に自分で移動できる手段を身につける必要があります。

今はまだ焦る必要はありません。

いずれ獲得するべきスキルとして、頭の片隅に留めておいてください。

移動手段について、学校を卒業した後の親の本音とは

座談会では、主に特別支援学校の高等部を卒業しているお子さんの話が中心でしたが、その過半数以上が以下の項目に該当していました。

  1. 移動手段を常に親に頼っている、もしくは福祉サービスに頼っている。
  2. 公共交通機関を利用できない、もしくは利用させることができない。
  3. 自転車に乗れない、もしくは乗せることができない。

移動手段を常に親に頼っている、もしくは福祉サービスに頼っている。

私達が住んでいる場所は、公共交通機関が充実していません。

そのため、余暇活動を含め、外出の殆どは親が自家用車で送迎することメインとなっています。

自分が外出するついでに、子供を余暇活動場所へ送迎する保護者もいれば、

仕事などの用事があって大変けど、子供のために何とか送迎をする保護者もいらっしゃいます。

でも、いずれの保護者も将来的には自分で自立して外出して欲しいと願っています。

余暇活動の場所までは、主催している団体が送迎バスを出している場合もあります。

しかし、余暇活動で送迎バスを運営していくには費用は掛かるため運営していないケースが多数です。

また、遠方から来る人が優先される場合があるため、必ずしもお子さんが利用できる保証はありません。

次に、介護タクシーという選択肢があります。

「福祉サービス受給者証」を所持していれば、利用ができたり、また障がいの等級によって「タクシーチケット」を発行している市町村もあります。

介護タクシーを利用して、送迎人兼介護人と一緒に、映画館へ連れて行ってもらう等の利用方法があります。

この場合、付添いの送迎人兼介護人の方の施設利用料金についても負担することになります。

公共交通機関を利用できない、もしくは利用させることができない。

公共交通機関を利用する場合、自分一人で利用することが難しいお子さんが多いです。

もちろん、学校で練習する機会は、何度かあります。

ただし、都市部でない限り、学校で校外学習として公共交通機関の利用を練習する機会は非常に少ないです。

私達の子供が通っている特別支援学校でも、小学部では年に2回程度です。

そのため、公共交通機関を自分で利用できるように練習するためには、保護者の努力が必要不可欠となります。

必要な時期が来てからいきなり練習するのではなく、小さい頃から少しずつでも公共交通機関に慣れておく必要があります。

一方、例えお子さんが公共交通機関を使って移動できる能力があっても、利用させない方針の保護者の方もおられます。

なぜかというと、本人の予想がつかないトラブルが起こった場合、その対処が本人だけで対応できないためです。

これは、各人の発達状況等によって、考え方や方針は変わってくると思います。

例えば、A駅からB駅に向かおうとした時、電車のトラブルで急遽運休となり、代わりにA駅からB駅への臨時バスが出ることになった場合、あなただったら、どうしますか?

おそらく、臨時バスを利用するでしょう。

ですが、このような急激な変化に対応できないお子さんですと、どうすればいいのか分からなくなってしまいます。

喋ることができなかったり、誰かに聞くことができなかったり、パニックに陥って、助けを求めることができずに、ただ立ちすくんでしまうのです。

あなたのお子さんは将来、スムーズにB駅に向かうことができる柔軟性や、分からないことを周りの方に聞いて解決できるスキルを、備えることができているでしょうか?

実際の例では、本人が携帯を所持しており、何かあれば親に連絡することを教えられていたため、親に連絡することができました。

そのあとは、保護者の方が電話に出てもらった駅員さんに事情を説明し、無事にB駅まで行くことができたのです。

周りに迷惑をかけたりしないかと心配してしまいますが、不測の事態にパニックを起こさないよう、事前に多くの経験を積まないといけません。

また、小さい頃から親と一緒に鉄道を利用していたお子さんの場合は、社会人となった今では、休日一人で電車で遊びに行っています。

この方の場合、乗車券の購入時に療育手帳を利用することや、何か不測の事態があった時の対処をきちんとわかっているようで、とても感心しました。

自転車に乗れない、もしくは乗せることができない。

大きくなってからも、自転車に乗れないお子さんも多いです。

我が家の長男も、最近まで自転車に乗れませんでしたが、地道に練習を重ねてようやく乗れるようになりました。

「将来的に自転車に乗れた方が、本人の行動範囲が広がりがでるのでは」という思いと「今のうちに自転車に乗るスキルを獲得しておいて欲しい」という思いがあったためです。

本人の頑張りもあって、ようやく乗れるようになったのですが、今度は別の問題が出てきました。

それは、交通マナーです。

ご存知の方もいらっしゃると思いますが、道路交通法が改正され、自転車の交通ルールも厳しくなりました。

例えば、イヤホーン等を使用した運転や一時停止無視等により、3年間の間に2回以上取締りを受けた場合は、公安委員会より自転車運転者講習を受けるように命令がきます。

この受講命令に従わなかった場合は、5万円以下の罰金となります。

自転車の運転による交通の危険を防止するための講習に関する規定の整備
一定の危険な違反行為(信号無視、一時不停止、酒酔い運転等)をして3年以内に2回以上摘発された自転車運転者(悪質自転車運転者)は、公安委員会の命令を受けてから3ヵ月以内の指定された期間内に講習を受けなければなりません。自転車による危険な違反行為
①信号無視
②通行禁止違反
③歩行者用道路における車両の義務違反(徐行違反)
④通行区分違反
⑤路側帯通行時の歩行者の通行妨害
⑥遮断踏切立入り
⑦交差点安全進行義務違反等
⑧交差点優先車妨害等
⑨環状交差点安全進行義務違反等
⑩指定場所一時不停止等
⑪歩道通行時の通行方法違反
⑫制動装置(ブレーキ)不良自転車運転
⑬酒酔い運転
⑭安全運転義務違反

平成27年6月1日施行
出典:全日本交通安全協会

また、万が一何かしらの事故を起こした場合についても、知的障がいを理由に、監督責任として、不法行為に対する賠償責任は免れることができません。

つまり、仮に人様のものを壊してしまったとき、本人は罪には問われないとしても、壊したことに対する賠償責任はありますよ。ということです。

長男の通っている特別支援学校でも、自転車で通学している子はいますが、学校からは、保護者がお子さんにきちんと、交通マナーを守るように話してくださいと念を押していました。

例え自転車でも、事故やトラブルは発生します。

そんな時にはどうしたらいいかを、お子さんに教えておかないと、本人はパニックになってしまうでしょう。

OB保護者の中には、お子さんが乗る自転車のタイヤが、通学途中でパンクしてしまい、あらかじめそんな時はどうするかをきちんと教えておいたので、何とか対処できたという方がいらっしゃいました。

自転車は乗れるまでも大変ですが、乗れた後もお子さんに交通マナーや、何かあった時の対処法を教えることがとても重要になります。

 子供の将来に向けて、今から何を実践するべきか?

1.子供の将来像を考える

お子さんが大きくなった時、どんな生活を送っているか考えてみましょう。

学校までの通学はどうしますか?

近所のスーパーまで買い物へ行くにはどうしますか?

映画館やショッピングセンターへ行くにはどうしますか?

行先によって、いろんな移動手段があります。

短期間で移動手段を身につけるのは難しいですし、本人も戸惑ってしまいます。

そのため、小さい頃はいろんな移動に慣れておくことが大事です。

例えばバスですと、最初、本人にはバスに慣れることを目標としましょう。

1回目の本人の様子を見て、2回目は整理券をとらせてあげ、3回目は運賃を運賃箱にいれることをさせてみるなど、できそうなことを徐々に広げていきます。

それにより、本人にとってもできることが、どんどん多くなるので、バスに乗ることが楽しくなるかもしれません。

また、回数をこなすことにより、バスの中での公共マナーも身につけさせる練習もなります。

2.やる前から「できない」と諦めない

移動手段の練習は、親のサポートが不可欠です。

お子さんができるようになるまでは、何回も練習が必要になるかもしれません。

練習を重ねても、なかなかうまくいかない時があります。

そのため、「この子には、できない」と諦めてしまいがちです。

「できなくても、たぶん、何とかなる」

もしかしたら、何とかなるかもしれません。

でも、そんな保証はありません。

そう思って過ごしているうちに、必要なときは必ずやってきます。

お子さんの「できる力」を信じてみませんか?

お子さんが長い時間をかけて得たものは、きっと将来に繋がります。

練習時間が短くてもいいです。

月に1回でもいいです。

自転車に乗る練習って、普通はせいぜい数回ですよね。

きちんと練習すれば、早い子だと数時間で乗れるようになるそうです。

でも、私たちの長男が自転車に乗れたのは、練習を始めて約半年後でした。

練習は、週1回だったり、月数回のときもありました。

思うようにいかず、イライラしたときもありました。

でも、最初から長い目で取り組んで、諦めないでコツコツ続けた結果、乗れるようになったのです。

だから、お子さんの可能性を信じて、練習を継続しましょう。

3.失敗しても大丈夫という経験を積ませる

初めてすることには、誰でも最初からうまくいきません。

成功する体験を積ませるのは大事ですが、いつも成功するとは限りません。

ある程度、お子さんができるようになったら、親は見守ることをしましょう。

いつまでも親が先回りしてしまうと、お子さんはいつまでたってもできません。

むしろ、失敗したときに本人がパニックに陥らないように、失敗しても大丈夫という経験をさせることも大事なのです。

失敗の経験は、何度か教えたり、改善すれば、次第にできるようになります。

失敗の経験をこなすことで、本人は失敗のいろんなパターンを知ることができますし、親もお子さんの様子を見て、次はこうしたらいいかもしれないと対策ができます。

それを繰り返すことで、成功できるようになるのです。

まとめ:無理をせず一緒に楽しむことが大切

お子さんがまだ小さい場合、「まだ、うちの子には早すぎる」、「大きくなってからで、いいのでは?」と思っていないでしょうか?

確かに今から焦る必要は全くありません。

でも、長期的に見て、「こんなことができるようになって欲しい」というビジョンが予めあれば、

「いつもは車で移動するところ、今回は電車に挑戦してみよう。」

というように生活の中に療育を取り込んでいくことができるでしょう。

そして、続けるためには、親も一緒に楽しむことがいいと思っています。

お子さんが小さい頃から一緒に電車に乗っていた方は、もともと電車が好きでした。

その方は、お子さんと一緒に電車に乗ることが楽しく、またそれがお子さんにとっても将来の余暇の過ごし方に繋がったのだと思います。

電車などの乗り物に興味がなくても、電車に乗って本やケーキを買いに行こうでもいいでしょう。

また、最初は電車じゃなくても、歩いて近所のスーパーでお菓子を買うことなど、小さなことからでもいいと思います。

まずは、親が無理をしない範囲で続けることが大切です。

忙しい中で常に無理をしていると、お子さんの何気ない行動にイライラしたり、叱ったりしてしまいます。

そうなると、お子さんの練習にもなりませんし、外出が嫌になってしまいます。

そのためにも、お子さんの行動に余裕をもって対応できるよう、無理をしないでください。

また、お子さんと一緒に楽しんでみてください。

長男が自転車に乗れた時、風を切って自転車をこぐのが楽しいようで、長男はとても嬉しそうでした。

自転車で並走していた私は、「やったね。すごいね。」と言い、長男が止まるまで一緒に走っていました。

長男が止まった時、私が「やった~!」と手を出すと、長男は「やった~!」と言い、ハイタッチをしてくれました。

できた瞬間を共有できることで、感情の共有もできるし、何より親子間が深まると思います。

お子さんの将来に向けて、今から是非取り組んでみてください。

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この本の中には、これまで私達が体験してきたいろいろなエピソードを基に、私達が感じた不安や、不安を感じつつも、やってきて良かったと思ったこと、そして、自閉症の子供を健やかに育てるために、幼児期から気を付ける7つのことが書かれています。
かつての私達と同じように、将来に対する不安を抱えているお母さんや、お子さんに診断が出て戸惑っているお母さん、不安になっているお母さん達の心の負担がきっと軽くなるでしょう。

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